マイナー降格の青柳晃洋にヤクルト移籍が急浮上 古巣・阪神への復帰はあるのか?
鬼筆のトラ漫遊記
米大リーグ・フィリーズとマイナー契約を結び、招待選手としてメジャーキャンプに参加していた青柳晃洋投手(31)のマイナーキャンプへの降格が決まりました。同じくマイナーに降格した小笠原慎之介投手(27)=ナショナルズ3A=や藤浪晋太郎投手(30)=マリナーズ3A=はメジャー復帰の可能性を残していますが、青柳は4月中にも解雇通告を受ける可能性が極めて高い状況です。次の選択肢は日本球界復帰か米独立リーグ移籍の2つですが、仮に前者を選択するならば、先発ローテーションの駒不足に悩むチームは即刻オファーするのではないでしょうか。争奪戦の可能性もありますが、本命はヤクルトでしょう。
夢を抱いて海を渡った3人の投手が次々と非情通告を受けました。阪神からポスティングシステムを利用し、マイナー契約でフィリーズに移籍した青柳。同じく中日からポスティングシステムを利用し、メジャー契約でナショナルズに移籍した小笠原。昨季、メッツと単年契約を締結もシーズン中に3Aに降格し、そのまま自由契約となっていた藤浪も再びメジャー昇格を目指してマリナーズとマイナー契約を結びましたが、ここにきて3人ともマイナーへの降格となりました。
小笠原、藤浪も
ドジャースの大谷翔平や山本由伸、カブスの鈴木誠也、パドレスのダルビッシュ有ら大リーグに挑戦し、成功した者たちがいる一方で、厳しい競争社会の中でふるいにかけられる選手も出てきます。
ただし、ほぼ同時期にマイナー通告を受けた3人の前途にはそれぞれ全く違う景色が広がります。まずはメジャー契約の小笠原。2年総額350万ドル(約5億5千万円)と契約内容が青柳、藤浪とは全然違います。メジャー契約なので即解雇にはならず、契約上はメジャーとマイナーの昇降格を無制限に繰り返してもいいのです。シーズンに入れば、メジャー枠の13人前後の投手に故障者やトレード移籍する選手が出てきます。穴埋めでメジャー昇格のチャンスは大いにあります。
続いて藤浪ですが、マリナーズは3Aで投球フォームを改善し、ロングリリーフとして起用する方針です。大リーグでは「イニングイーター」という用語があります。文字通り、イニングを食ってくれる投手のこと。主にリリーフとして起用し、敗戦処理などでイニングを稼いでくれる投手にしたい考えです。即解雇はありません。
メジャー昇格は絶望的
しかし、青柳の立場は極めて厳しい。マイナー契約で招待選手として春季キャンプに参加し、メジャー昇格を目指しましたが、オープン戦4試合の登板で3回4失点、防御率12・00。フィリーズは日本市場の開拓も視野に入れてマイナー契約を締結しましたが、与四死球7という制球難は問題外です。球団は「チームに貢献できない選手をロースターに加えるわけにはいかない」と断を下しました。
背景には2つの要因が考えられます。一つ目はフィリーズの投手陣が充実している点。開幕の投手陣には13人ぐらいが入りますが、ほぼ埋まっています。「大リーグ有数のスタッフ」と評価する関係者もいて、青柳が入る隙間がない。
さらに契約上の〝問題〟もあります。青柳はメジャー昇格ならば年俸100万ドル(約1億5千万円)で、メジャー最低年俸の76万ドル(約1億1千万円)よりも高くなる。フィリーズとすれば、日割り計算でも〝メジャー賃金〟は支払いたくないでしょう。こうした背景があり、31歳という年齢からすれば2Aに降格する可能性もない。20歳前半の選手たちが育成の場としてプレーする2Aや1Aに居場所はありません。
米独立リーグも選択肢に
では、フィリーズはどうするのか? 答えは単純です。「カット」。3Aのロースターは28人。そのうち投手陣は10~13人。メジャー昇格の可能性が低く、置き場に困る選手に対して球団は迅速な判断を下すでしょう。早ければ4月中にも…。
そうであるならば青柳はどうする? 2つの選択肢があります。一つは米独立リーグ移籍です。レベルの高い北米のアトランティック・リーグかメキシカン・リーグに移籍し、そこからメジャーを狙う。しかし、過酷なプレー環境に耐えられるでしょうか?
もう一つの選択肢が日本球界復帰です。プロ野球は28日にシーズン開幕を迎えます。12球団は臨戦態勢に入っていますが、どのチームも万全な戦力状況ではありません。開幕からの先発ローテを組むのさえ難儀しているチームもあります。
例えばヤクルト。開幕投手は奥川、そこから吉村、高橋奎、小川、石川、高梨あたりが先発候補です。新外国人のランバートも体調不良で出遅れていましたが、オープン戦初登板の日本ハム戦(23日=エスコン)で4回3安打2失点。しかし、故障明けの奥川やベテランの石川は中6日で回るのは無理です。パ・リーグでは楽天も万全ではありません。早川、岸、藤井聖、古謝、内、瀧中、ヤフーレあたりで回すのでしょうが、不安の残るローテーションですね。
争奪戦の可能性も
青柳は昨季こそ2勝3敗でしたが、2021年からの2季は13勝6敗、13勝4敗で最多勝&最高勝率。22年は最優秀防御率にも輝きました。23年は8勝6敗でしたが、オリックスとの日本シリーズでは第7戦に先発し、勝利に貢献しています。仮に日本球界への復帰を決断したならば、投手陣に不安を抱くチームの監督は喉から手が出るほど欲しいサイドハンドではないでしょうか。争奪戦の可能性も大いにあります。
古巣の阪神はどうでしょう。すでに開幕からの先発ローテは村上、富田、門別、才木、デュプランティエ、ビーズリーで固まり、ルーキーの伊原もいます。下肢の張りで出遅れていた大竹も早期に戻ってきそうです。他にも西勇や伊藤将らがいて、戻る場所はなさそうです。なので、青柳が日本球界復帰を決断した場合でも、阪神を選択する可能性は極めて低いと考えます。ただ、そうなると敵のヤクルトに加入する可能性も…。それを藤川球児監督はどう捉えるのでしょうか。
=金額は推定
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【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。